海外での扇子文化 2 │2007年11月07日
スペインの扇子文化
扇子というと日本を中心としたアジア各国の文化という感じがしますが、実は遠くヨーロッパにも扇子文化が根づいています。特に、スペインでは現在でも扇子文化が生活に浸透しているといえるでしょう。
ヨーロッパに扇子が渡ったのは、日本の江戸初期、ポルトガルやスペインとの間に行われた南蛮貿易で扇子は海をわたりました。その後、ヨーロッパ各地で扇子文化が育まれましたが、時代の流れからか少しずつ衰退していった扇子文化も、スペインだけは着々と発達し続けてきました。理由ははっきりと分かりませんが、スペイン独特の暑い気候のせいなのかもしれません。スペインでは今でも多くのシーンでオリジナル扇子が使われています。
スペインでは、オリジナル扇子は扇ぐ道具以外に、インテリアや芸能の小道具、コミュニケーションの道具として使われてきました。ただ面白いことに、日本では男性も女性も使う扇子が、スペインでは女性だけしか使わないそうです。これはスペインでの扇子文化の歴史によるものではないかと思われるのですが、100年くらい前はスペインのオリジナル扇子は女性が男性への気持ちを伝える道具だったそうです。当時盛んに行われていた舞踏会で、付き添いの目を盗んで気持ちを寄せる男性にこころを伝えたといわれています。
オリジナル扇子の使い方でそれぞれ意味があり、たとえば扇子を閉じ、その後開いて頬に当てたら、「あなたを好きです」という意味になるそうです。また、胸の前でゆっくり扇いだら「私はもう求婚者がいるから構わないで」、扇子をこめかみにあてて上をみると「昼も夜もあなたを思っています」という意味になるそうです。
こういった歴史的背景から、今でもスペインでは日常的に扇子が使われています。スペインに観光に来たヨーロッパ人が、扇子でパタパタと扇ぐスペイン人をみて驚くことがよくあるそうです。他のヨーロッパ諸国で扇子はインテリアとして飾るもの。扇ぐものではないのです。そのなかでオリジナル扇子もきっと利用されていることでしょう。
スペインに独自の扇子文化が発展していることがわかるエピソードがあります。スペインのフェリペ皇太子の結婚式の際、祝賀パレードを待つたくさんの市民の手に扇子が握られていたそうです。これはマドリード市の粋なはからいで、初夏の陽射しの中でパレードを待つ人々に少しでも涼風をと、18万本の特性オリジナル扇子を用意したためでした。本当ならば、オリジナル扇子が揺れ動く中を進む馬車を見ることができたのですが、折から降り出した夕立によってそれを見ることは叶いませんでした。
しかし、結婚式と晩餐会の席では、扇子は重要な役割を果たしました。出席した王室の多くの婦人は手にオリジナル扇子を携えていました。スペインの社交界では、正装した女性が手に携える装飾小物はそのほとんどが扇子なのだそうです。挙式後のレティシア妃の手にも例外なく扇子が携えられていたそうです。
また、記憶に新しいアテネオリンピックの開会式でも、スペインの女子選手全員が真紅の扇子を振りながら入場行進する姿を見ることができました。この光景も、スペインの生活に扇子が深くかかわっているからこそといえるかもしれません。
海外での扇子文化 1
扇子の歴史でも解説しましたが、扇子は日本で生まれたまさに「メイドインジャパン」です。当然、日本国内で数百年に渡って扇子文化が育まれましたが、同時に日本から海外に伝わったオリジナル扇子も各国で独自の扇子文化を育んできました。そこではオリジナル扇子の文化も発達してたことでしょう。今回は「海外での扇子文化」について解説したいと思います。
韓国での扇子文化
日本のお隣、「韓国」でも、日本から伝えられた扇子文化が根づいています。韓国の扇子文化で特に有名なものといえば、近代に入って作られた創作舞踊「プチェチュム」と呼ばれる扇子踊りではないでしょうか。「プチェチュム」は「プチェ=扇子」と「チュム=踊り」を意味した言葉で、和訳すればまさに扇子踊りとなります。そこではきっとオリジナル扇子も使われたことでしょう。
日本の扇子が和紙で作られることが多いのに対し、韓国の扇子は透き通った薄い布で作られています。日本の扇子に比べると、柔らかく優しい印象を与えてくれる扇子といえます。
「プチェチュム」は、両手の扇子を広げる、閉じる、回すといった動きを組み合わせた複雑な踊りです。また、大勢で踊るときは2人ずつ組んで扇子で蝶の形を作ったり、全員で円になり花の形を作りながら回ったりもします。「プチェチュム」で重要なポイントは、基本的な手の振りや足の踏み出しだそうで、くるくるとなめらかに回れなければ華麗な舞いをすることはできないそうです。
中国での扇子文化
扇子はもともと中国で生まれた「うちわ」が日本に渡り、うちわを折り畳んで携帯に便利な道具に改良し「扇子」が生まれたといわれています。日本で生まれた扇子は、鎌倉時代に、禅僧などによって中国へ渡りました。
中国にわたった扇子は、ここで大きな変化がおこります。それまで日本の扇子は、片面にだけ紙が貼り付けられたものでしたが、中国で紙を両面に貼り付けるスタイルに変化したのです。中国で両面貼りになった扇子は、室町時代にまた日本へ逆輸入されました。当時、中国から渡ってきた扇子は、当時の中国の呼び名から「唐扇(からせん)」と呼ばれ、その後日本でも両面貼りの様式が使われるようになったそうです。
もちろん、中国も独自の扇子文化を形成してきました。ただ、当時の中国で扇子を持つのは一部の人間に限られていたようです。王朝時代ですと官僚や文人、民国時代も文人や知識人などのステータスの小道具としてオリジナル扇子が用いられることが多かったようです。当時の肖像画や絵画などをみると、扇子を手にしたモデルが多いことがよく分かります。
中国では「インテリ」層の小道具として発達した扇子(オリジナル扇子)ですが、一方でまったく違った発展もしました。それは「鉄扇(てっせん)」です。扇ぐ道具であったはずの扇子が、なぜが武器として発達していったというのは、非常に興味深い事実ですね。
この「鉄扇」は、文字通り骨に鉄が使われており、基本的には殴打用の武器として用いられました。かつては、武器の持ち込みが禁じられた場所で護身用の暗器(隠し持つ武器)として多く用いられたそうです。それがさらに発展し、扇子の中に刃や針を仕込んだものなども考案されていたそうです。
日本の踊りと扇子
扇子(オリジナル扇子)の使い道のひとつとして欠かせないものに、『踊り』があります。日本各地で受け継がれてきている踊りの中には、扇子(オリジナル扇子)を使ったものも多数存在しています。その多くは、『扇子踊り』と呼ばれています。どの地域の踊りも、数百年にわたる歴史を持ち、その地域で親から子へ、子から孫へと引き継がれてきたすばらしい舞です。そのルーツを見てみると、やはり「踊り」そのもののルーツである「供養・奉納」に行き着きます。そこでここでは、全国に点在する「扇子踊り」の中から、いくつかを紹介させていただきます。
1.津久見扇子踊り(大分県津久見市)
大分県の中部エリア、津久見市の夏の風物詩は「津久見市民扇子踊り大会」です。この扇子踊りは、約450年もの歴史のある伝統芸能で、毎年8月下旬に、約1000人の踊り子が舞い踊る津久見市の最大のイベントのひとつです。
この扇子踊りのルーツは、津久見が九州の有力大名「大友氏」の支配下にあった時代に、戦没した勇士や農民を供養するために、京舞いの流れをくむ「扇子踊り」ができたと伝えられているそうです。
日本各地に扇子踊りは伝承されていますが、1000人以上の踊り子がいっせいに踊る姿を見ることができるのは、この津久見だけかもしれません。
2.加茂 扇子踊り(愛媛県西条市)
愛媛県東部の西条市、その山間部「加茂地区」にも伝統の扇子踊りが継承されています。毎年8月15日の夜に、地元の誓願寺の盆踊り大会で踊られていた踊りです。
この踊りは約420年の歴史を持ち、はじまりは豊臣秀吉の四国征伐までさかのぼります。豊臣勢を迎え打つ長曽我部元親の援軍として土佐から伊予の国に入った伊東近江守祐晴が、訳あってそのまま住みつき誓願寺を建立したと言われています。そして、戦で死んだ人たちへの供養として踊りを奉納したのが始まりだそうです。
この踊りの特徴は、扇子踊りの前に刃踊りを踊ること。昔から、「刃踊り」をまず踊り、次に「扇子踊り」を踊る慣習なのだそうです。
ただ、残念なことに、平成10年まで開催されていた盆踊り大会も、人口減少・過疎化により、現在は開かれていないということです。
3.新野高原盆踊り(長野県阿南町)
長野県阿南町に、国の重要無形民俗文化財である「新野高原盆踊り」が伝承されています。この踊りは神々を供養する盆踊りの原型といわれ、「すくいさ」「高い山」「おさま甚句」「音頭」「十六」「おやま」「能登」の7種類で構成されています。扇子(オリジナル扇子)を手にして踊るのはそのなかの「音頭」「おさま甚句」「すくいさ」「おやま」の4種類です。
通常、盆踊りというと笛や太鼓、三味線などの楽器に合わせて踊りますが、この『新野高原盆踊り』は鳴り物を一切使いません。音頭台の上にいる5、6人の音頭取りの中の皮切りが最初の一句を始めると、それから朝まで唄い踊り続けるそうです。見物人を含めると2000人近くの人が集まる盛大な盆踊りです。
贈り物に扇子はいかが?
「贈り物をするんだけど何がいいかな」
「ちょっと変わった贈り物をしてみたい」
「オリジナル扇子なんてどうだろう」
最近は父の日・母の日や誕生日などのプレゼントに「扇子(オリジナル扇子)」を選ぶ人がふえています。値段的にも手軽に購入できるというのも理由のひとつでしょうが、やはりプレゼントをもらった方がいつも使えるという実用性の高さから扇子(オリジナル扇子)を選ぶ人も多いようです。専門店には、普段使いの扇子のほかにも、竹や紙・布質、装飾にこだわったギフト用の扇子も並んでいます。こういった扇子は、桐箱や持ち運び用の袋などとセットで販売されていることが多く、大切な方への贈り物としても最適です。
また、扇子は海外の友人や取引先などへのお土産としても喜ばれます。やはり日本から持っていくお土産ですから日本らしいものを持っていきたいもの。でも、人形や着物のようにかさばるものや高価なものは難しい。そんなときに重宝するのが日本伝統の「扇子」です。値段的にも手ごろですし、持ち運びもコンパクトでかさばりません。それになんといっても、これだけ日本を印象付けるものはあまりありませんね。ただ、外国の方にとっては、扇子はあおぐものというよりは日本の工芸品としての印象が強いと思います。そのため、扇子を部屋の中のインテリアとして飾ってもらうケースの方が多いと思いますので、「扇子立て」などと一緒にプレゼントされると良いかもしれません。
また、変わったところでは、会社のノベルティーとして扇子を採用するところもあるそうです。ノベルティーというとボールペンや手帳などが良く利用されますが、どうしても他の会社と同じものだとPR効果が少ない。そこで最近人気が出てきているのが「名前入りの扇子」だそうです。この名前入りの扇子は親骨の外側や内側に名前をいれることが出来ます。もっと積極的にPRしたい場合は、扇面の布や紙の部分に文字や写真・絵柄などを印刷するもので、完全オリジナルの扇子です。ノベルティーで使用する場合には、商品写真やロゴマークを入れて作成するケースが多いようです。夏になると、銀行や商店街などで名入りのうちわを配ったりしますが、あれの扇子版といったところでしょうか。ただ、うちわと違い折りたたんで携帯できますので、ノベルティーとしての効果も高いかもしれません。
このオリジナル扇子は、会社のノベルティーのほかにも、結婚式の引き出物や記念品などとして作成することも出来ます。結婚式の引き出物ですと、結婚されるお二人の写真を入れた扇子をつくったりします。他にもお孫さんの写真や大事なペットの写真を使ってオリジナル扇子を作る方も多いそうです。また、ご自分で描かれた絵や俳画、書などをを扇面にプリントしオリジナル扇子に仕立てるのもまた素敵ですね。先述した父の日・母の日のプレゼントや、お世話になった方への贈答品としても喜ばれる一品になるのではないでしょうか。